治療の成功と失敗の定義

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「NTMの治療の成功および失敗の定義とは何ですか?」

治療の成功や失敗などNTM診療における様々な定義に関しては、2018年のNTM-NET consensus statementに記されている。

NTMの病勢は、画像所見や血液検査、自覚症状、キャピリア®MAC抗体価など様々な側面からの評価が必要であるが、最も参考となるのは「喀痰塗抹・培養」である。

NTMの診断がついている症例を外来診察する際には、可能な限り喀痰の採取に努める必要がある。治療中や治療後も同様である。

喀痰が中々採取できない症例も多いと思うが、そうした症例は基本的には治療適応ではないと私は考えている。もちろん空洞や重度の気管支拡張を有する症例は例外であるが。

喀痰が採取できない症例に対して気管支鏡検査を実施すべきかどうかは議論がわかれる所ではあるが、気管支鏡検査ではコンタミネーションの可能性にも留意しなければならない。
その他の鑑別疾患の診断目的に気管支鏡検査を行うことはあるが、NTMの診断目的のみで気管支鏡検査を実施する意義は乏しいと考えている。

2020年のガイドラインでは、少なくとも1週間以上の間隔をあけて採取した2回以上の喀痰での診断が推奨されている(1)。




van Ingen J, et al.: Eur Respir J. 2018 Mar 22;51(3):1800170.
doi: 10.1183/13993003.00170-2018.

culture conversion(喀痰培養陰性化)
  少なくとも4週間以上の間隔をあけて採取した喀痰において、3回以上連続で培養陰性化を達成すること。

Microbiological cure(微生物学的治癒)
  culture conversion達成後から抗菌薬治療終了まで、喀痰培養の陰性が持続すること。

Clnical cure(臨床的治癒)
  抗菌薬治療中に主観的もしくは客観的な症状の改善を認め、治療終了時まで改善が維持されること。

Cure(治癒)
  抗菌薬治療が終了し、微生物学的治癒と臨床的治癒の両方を達成すること。

Treatment failure(治療失敗)
  12カ月以上の抗菌薬治療にも関わらず喀痰培養で陽性が続くこと。もしくは、culture conversion達成後の治療中に、喀痰培養の陽性を複数回認めること。

Recurrence(再発)
  抗菌薬治療終了後に、喀痰培養の陽性を2回以上認めること。

Relapse(再燃)
  治療終了後に、治療前と同一菌株を喀痰培養で2回以上認めること。

Reinfection(再感染)
  治療終了後に、治療前の同一菌種の異なる菌株もしくは異なる菌種を喀痰培養で2回以上認めること。



*既報によると、NB型肺MAC症において、治療終了後の再発症例のうち75%が再感染であったと報告されている(2)。



(1)Daley CL, et al.:Eur Respir J. 2020 Jul 7;56(1):2000535.
(2)Wallace RJ Jr, et al.:Chest. 2014 Aug;146(2):276-282.
  



by macabskan | 2021-07-23 12:57 | 肺MAC症関連

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